
観葉植物の中でも、ビカクシダ(コウモリラン)は「壁に飾れる」「土がいらない」と一気に人気が高まっている植物です。ただ、いざ育て始めると「株元の葉が茶色くなってきた、枯れたの?」「水やりはどうすればいいの?」と戸惑う声がとても多いんです。
私自身、最初に迎えたビフルカツムの株元の葉が茶色くなったとき、枯れたと思って切ろうとしてしまいました。あとで「それは正常で、切ってはいけない部分」だと知って、ヒヤッとしたのを今でも覚えています。それからは板付けにも挑戦して、今は壁で胞子葉(ほうしよう)を大きく広げてくれています。
この記事では、ビカクシダの基本・板ごと浸ける水やり・茶色と黒で意味が真逆な貯水葉・飾り方の選び方・増やし方や冬越しまでを順にまとめました。どれも私が室内で育てながら見つけたコツです。
読み終わるころには、株元の葉が茶色くなっても慌てず、自分の部屋に合った飾り方でこの植物を楽しめるようになっているはずです。
この記事で分かること
- ビカクシダが「着生シダ」で、土植えの植物と育て方が違う理由
- 板ごと水に浸ける「ソーキング」の水やり手順と季節別の頻度
- 株元の葉(貯水葉)が茶色いのは正常、黒くぶよぶよは腐敗という見分け方
- 初心者向けの品種と、鉢植え・苔玉・板付けの選び方
- 水苔と板でつくる板付けの手順と、株分けでの増やし方
こんな人におすすめ
- 壁掛けや吊るしで、ほかと違うグリーンを飾りたい人
- 株元の葉が茶色くなって、枯れたのか不安な人
- 板付けに挑戦してみたいけれど手順が分からない人
- 水やりや冬越しの正解を知って、長く育てたい人
ビカクシダ(コウモリラン)の基本|着生シダの魅力と2種類の葉
ビカクシダは、土に根を張らず木の幹などに着生(ちゃくせい)して育つシダの仲間です。学名は Platycerium(ビカクシダ属)、ウラボシ科に分類されます。鹿の角のような葉の形から「麋角羊歯(ビカクシダ)」、その姿がコウモリの羽にも見えることから「コウモリラン」とも呼ばれます。
原産地はオーストラリアや東南アジア、アフリカ、南米などの熱帯から亜熱帯。自然界では大きな木の幹や枝に張りついて、雨や空気中の水分を取り込みながら暮らしています。土がいらず、壁や流木に飾れるのは、この着生という性質があるからです。
貯水葉と胞子葉|2種類の葉が役割を分担している
ビカクシダを理解するうえで欠かせないのが、形の違う2種類の葉です。この2つの役割を知っておくと、後で出てくる「茶色い葉問題」で迷わなくなります。
- 貯水葉(ちょすいよう)|株元を覆うように丸く広がる葉。外套葉(がいとうよう)とも呼ばれ、水分や養分をスポンジのように蓄え、根を守る役割があります。古くなると茶色く枯れていきますが、それも株を支える大切な土台になります。
- 胞子葉(ほうしよう)|コウモリの羽のように上や横へ伸びる葉。裏側に胞子(ほうし)をつけ、光合成の主役になります。私たちが「飾って楽しむ」のは、おもにこの葉の姿です。
そして葉の出てくる中心部分を成長点(せいちょうてん)と呼びます。ここが新しい葉を生み出す心臓部なので、植え替えや板付けのときに傷つけないことが、長く元気に育てる最大のポイントになります。
まずは基本データを表で押さえておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Platycerium(ビカクシダ属) |
| 科名 | ウラボシ科 |
| 別名 | コウモリラン、麋角羊歯 |
| 原産地 | オーストラリア、東南アジア、アフリカ、南米などの熱帯〜亜熱帯 |
| 分類 | 着生シダ(土に根を張らず樹木などに着生) |
| 置き場所 | 明るい日陰(レースカーテン越しの間接光) |
| 耐寒の目安 | 品種により差。多くは10℃以上が安心(5℃以下は注意) |
| 育てやすさ | 品種を選べば初心者でも育てやすい |
| 飾り方 | 鉢植え、苔玉、板付け(壁掛け・吊るし) |
ビカクシダの人気品種と選び方|初心者はどれを選ぶ
初めてのビカクシダなら、丈夫で寒さにも比較的強い「ビフルカツム」か「ネザーランド」を選ぶのが安心です。リドレイやグランデは姿が魅力的ですが、湿度や温度の管理にコツがいるので、1鉢目で枯らさず自信をつけてからのほうが向いています。
ビカクシダ属には世界に18種ほどがあり、栽培品種も含めると流通している種類はかなり豊富です。その中から、よく出回っていて選びやすい4タイプを比較してみます。
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| 品種 | 特徴 | 育てやすさ | こんな人に |
|---|---|---|---|
| ビフルカツム | もっとも流通する定番。胞子葉が垂れ下がり、寒さや乾燥に比較的強い | 初心者向き | まず1鉢目に。失敗しにくい |
| ネザーランド | ビフルカツムの栽培品種。貯水葉が立ち上がり、葉が垂れすぎず姿がまとまる | 初心者向き | 形よく育てたい人 |
| リドレイ | 胞子葉が上に伸び、貯水葉が球状にまとまる人気種。湿度を好む | 中級者向き | 個性的な姿を楽しみたい人 |
| グランデ | 大型で「森の王冠」とも呼ばれる存在感。スペースと湿度が必要 | 上級者向き | シンボルとして大きく育てたい人 |
どこで買える|100均やホームセンターでも手に入る
ビカクシダは、園芸店や観葉植物の通販はもちろん、ホームセンターや100円ショップでも見かけます。ダイソーなどでは、小さなプラ鉢に植えられたビフルカツムの若い株が数百円で並ぶこともあります。
私が最初に育てたのも、ホームセンターで見つけた小さなビフルカツムでした。安く始められる一方で、輸入直後や株分け直後の株は弱っていることもあります。貯水葉が乾いてしっかり板や鉢に張りついた、元気そうな株を選ぶのがコツです。

ビカクシダの育て方|枯らさない5つの原則
ビカクシダを枯らさない基本は、明るい日陰に置き、乾いたら株ごとたっぷり水を含ませ、冬は10℃以上を保つことです。土植えの植物と違って「土が乾いたら水やり」が通用しないので、水のあげ方だけ最初に覚えてしまえば、あとはむずかしくありません。
ここでは光・水・温度・湿度・風通しの5つに分けて、順番に見ていきます。
1. 光|レースカーテン越しの明るい日陰に
ビカクシダは、直射日光のあたらない明るい場所を好みます。室内ならレースカーテン越しの窓辺が理想です。真夏の直射日光に当てると、胞子葉が茶色く焼けてしまうので注意してください。屋外で育てる場合は、30〜50%ほどの遮光ネットを通した光がちょうどよい明るさです。
2. 水やり|乾いたら板ごと「ソーキング」
板付けや苔玉のビカクシダは、水苔(みずごけ)の中まで乾いてきたら、株ごと水に10〜20分ほど浸ける「ソーキング」でたっぷり水分を含ませましょう。バケツや洗面台に水をため、株元の水苔がしっかり給水したら引き上げ、よく水を切ってから元の場所に戻します。鉢植えの場合は、植え込み材が乾いたタイミングで、鉢底から流れ出るまで水を与えてください。
頻度の目安は季節で変わります。下の表を参考にしてください。
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| 季節 | 水やりの頻度(目安) | ポイント |
|---|---|---|
| 春・秋(生育期) | 水苔が乾いたら。週1回前後 | 生長が活発。乾き具合を見て調整 |
| 夏 | 週1〜2回+朝夕の葉水 | 乾きやすい。水やりは涼しい朝か夕方に |
| 冬 | 2週間に1回程度 | 生長が止まる休眠期。室温に近い水で控えめに |
気をつけたいのは、株元の貯水葉の中心に水をためすぎないことです。常に湿ったままだと、後で説明する腐敗の原因になります。
ソーキングや板付けに使う水苔は、保水性と通気性のよいニュージーランド産が扱いやすいです。私も大袋でストックしておいて、水苔が乾いてきたら惜しまず取り替えるようにしています。
3. 温度|適温は20〜25℃、冬は10℃以上を目安に
生育に向く温度は20〜25℃ほどです。耐寒性は品種によって差がありますが、多くの品種は最低でも10℃以上を保つと安心して冬を越せます。ビフルカツムなど丈夫な品種でも、5℃を下回ると傷むことがあるので、寒い時期は窓際から離して暖かい場所に移してあげましょう。
4. 湿度|熱帯の樹上育ちなので乾燥は苦手
自然界では雨林の木の上で暮らしているため、湿度の高い環境を好みます。エアコンで乾燥する季節は、霧吹きでの葉水を1日1〜2回足すと、葉先の枯れを防げます。とくに冬の暖房中と、夏の冷房中は乾燥しやすいので意識してみてください。
5. 風通し|蒸れとカビを防ぐ最後のひと押し
湿度が好きとはいえ、空気がよどんで蒸れた状態は苦手です。水やりのあとに風通しの悪い場所へ戻すと、株元が乾かずカビや腐敗を招きます。サーキュレーターでそよ風を回すか、窓を少し開けて空気を動かしてあげると、ぐっと失敗が減ります。エアコンの風が直接あたる場所は乾きすぎるので避けてください。
\ 室内の湿度管理をもっと詳しく /
ビカクシダの貯水葉が茶色いのは正常?|切る前に確認したいこと
株元の貯水葉が茶色く乾いてきたのは、ほとんどの場合「正常な老化」で、切ってはいけません。一方で、黒く柔らかくぶよぶよしている場合は、水のやりすぎによる腐敗のサインです。色と手ざわりで意味が真逆になるので、ここを見分けられると安心して育てられます。
冒頭でも触れたとおり、私が最初にやりかけた失敗がこれです。茶色くなった貯水葉を「枯れた」と思い込んで切ろうとしました。でも貯水葉は、古くなって茶色くなったあとも、新しい葉が上に重なりながら株を支える土台になります。剥がしたり切ったりすると、かえって株を弱らせてしまうんです。
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| 状態 | 色・手ざわり | 意味 | どうする |
|---|---|---|---|
| 正常な老化 | 外側から茶色く、乾いてカサカサ | 古い貯水葉が役目を終えた自然な変化 | 切らずにそのまま残す |
| 腐敗のサイン | 黒く柔らかくぶよぶよ、嫌なにおい | 水のやりすぎ・蒸れによる腐り | 水やりを減らし、風通しを良くする。腐った部分は取り除く |
見分けるコツは、触ってみることです。乾いてパリッとしていれば心配いりません。逆に、押すとへこむほど柔らかくジメッとしていたら、水のあげすぎを疑ってください。新しい貯水葉は中心の成長点から出てくるので、そこさえ無事なら株は元気を取り戻します。

ビカクシダが枯れる原因と症状別の対処
ビカクシダの不調は、水のやりすぎ・乾燥・光不足・風通しの悪さのどれかに当てはまることがほとんどです。症状から原因をたどると、対処が早くなります。下の早見表で、自分の株の状態に近いものを探してみてください。
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| 症状 | 疑われる原因 | 最初にやること |
|---|---|---|
| 胞子葉の先が茶色く枯れる | 空気の乾燥・水切れ | 葉水を増やし、ソーキングの間隔を見直す |
| 貯水葉が黒くぶよぶよ | 水のやりすぎ・蒸れ | 水やりを減らし、風通しを確保。腐った部分は除去 |
| 胞子葉が垂れる・色が薄い | 光不足(垂れる品種は除く) | もう少し明るい場所へ移す |
| 葉に白い綿やベタつき | カイガラムシ・アブラムシ | 歯ブラシなどでこすり落とし、早めに駆除 |
| 株元に白いふわふわ | カビ(過湿+風通し不足) | 乾かし気味にし、空気を動かす |
害虫はこまめな観察で早めに対処
ビカクシダにつきやすいのは、カイガラムシ、ハダニ、アブラムシなどです。とくにカイガラムシは葉の付け根に白い塊として現れます。見つけたら歯ブラシや布でこすり落とし、数が多いときは薬剤も使いましょう。ハダニは乾燥した環境で増えるので、こまめな葉水が予防になります。
― 虫がつきにくい品種と予防のコツ ―
ビカクシダの飾り方3種|板付け・苔玉・鉢植えの選び方
ビカクシダの飾り方には、鉢植え・苔玉・板付けの3つがあります。管理のしやすさなら鉢植え、見た目のインパクトなら板付け、その中間が苔玉です。初心者はまず鉢植えで育て方に慣れてから、板付けに挑戦するのがおすすめです。
じつは、競合サイトでも「初心者は鉢植えから」という意見と「やっぱり板付けが本来の姿」という意見に分かれています。どちらも正しいので、自分の暮らし方に合うものを選べるよう、3つを比べてみます。
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| 飾り方 | 難易度 | 水やり | こんな人に |
|---|---|---|---|
| 鉢植え | やさしい | 植え込み材が乾いたらたっぷり | まず育て方に慣れたい初心者 |
| 苔玉 | ふつう | 苔玉ごとソーキング。乾きやすい | 吊るして気軽に飾りたい人 |
| 板付け | ややこだわり | 板ごとソーキング | 壁掛けで本格的に楽しみたい人 |
\ 吊るして飾るハンギングのアイデア /
ビカクシダの板付けの手順|水苔と板でつくる
板付けは、コルクや杉の板に、ぬるま湯でふやかした水苔で株を固定する飾り方です。成長点を上に向け、根元を水苔で包んでひもや釣り糸で巻きつけ、1か月ほど明るい日陰で養生(ようじょう)すると、貯水葉が板に張りついて活着(かっちゃく)します。一度コツをつかめば、それほどむずかしくありません。
用意するものと手順をまとめておきます。私が最初に板付けしたときは、水苔を巻く量が少なくて株がぐらついてしまったので、根元はやや多めに包むのがコツだと感じました。
用意するもの
- 板(コルク板・杉板・ヘゴ板など)
- 水苔(ぬるま湯でふやかして軽く絞る)
- ビカクシダの株(鉢から外したもの)
- 麻ひも、または釣り糸(テグス)
- ビスやフック(板を掛けるため)
板付けの流れ
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 水苔をぬるま湯で10分ほどふやかし、軽く絞っておく |
| 2 | 株を鉢から外し、古い土をやさしく落とす(成長点を傷つけない) |
| 3 | 板に株を置く位置を決める。成長点が上、貯水葉が板に向くように |
| 4 | 根元を水苔でこんもり包み、形を整える |
| 5 | 麻ひもや釣り糸で、水苔ごと板に何度も巻きつけて固定する |
| 6 | 明るい日陰で1か月ほど養生。貯水葉が板に張りつけば活着完了 |

板や水苔、ひもを一つずつそろえるのが面倒なら、必要なものがまとまった板付けセットから始めると手軽です。私が最初に板付けしたときも、こうしたセットに頼って失敗を減らしました。
ビカクシダの増やし方|株分けと胞子培養
ビカクシダを増やすなら、初心者には株分けが確実です。親株の周りに出てきた子株を、成長点ごと切り分けて植えつけます。適期は生育が活発になる5月中旬から8月ごろ。胞子からも増やせますが、無菌的な管理が必要で年単位の時間がかかるため、まずは株分けから試すのがおすすめです。
株分けのやり方
子株の貯水葉が3枚以上に育ち、しっかり自立しているのを確認してから、清潔なナイフやハサミで成長点を含めて切り離します。切り分けた子株は、新しい水苔で板付けや鉢植えにし、1か月ほど明るい日陰で養生します。この間は乾かしすぎないように、葉水をこまめに与えてください。
胞子培養は上級者向け
胞子葉の裏につく胞子を採取して育てる方法もありますが、こちらは清潔な環境と高い湿度を保ち続ける必要があり、発芽から株になるまで1年以上かかることもあります。じっくり時間をかけて楽しみたい人向けの、上級テクニックと考えておくとよいでしょう。
ビカクシダ(コウモリラン)のよくある質問
育てていると迷いやすいポイントを、質問形式でまとめました。日々の管理の確認に使ってください。
まとめ|ビカクシダで「飾る」グリーンライフを
ビカクシダは、土がいらず壁にも飾れる、ほかの観葉植物にはない楽しみ方ができる植物です。最後に、枯らさないための要点を5つにまとめておきます。
- 光|直射を避け、レースカーテン越しの明るい日陰に置く
- 水やり|水苔が乾いたら、板ごと10〜20分ソーキングしてよく水を切る
- 温度|冬は10℃以上を保ち、寒い夜は窓際から離す
- 湿度・風通し|葉水で乾燥を防ぎ、蒸れないよう空気を動かす
- 貯水葉|茶色は正常なので切らない。黒くぶよぶよは腐敗のサイン
私自身、最初は貯水葉を切りかけたり、板付けで株をぐらつかせたりと、小さな失敗を重ねてきました。それでも、コウモリの羽のような胞子葉が壁でのびのび広がる姿を見ると、迎えてよかったと思えます。
株元の葉が茶色くなっても、もう慌てる必要はありません。今日の内容を手元に、自分の部屋に合った飾り方で、この個性的なシダとの暮らしを楽しんでみてください。
「自分で板付けするのはまだ少し不安」という人は、プロが仕立てた壁掛けタイプから迎えるのも手です。記事で初心者向けにおすすめしたネザーランドの板付け株なら、届いたその日から壁のグリーンを楽しめます。
― 壁に、森のひとかけらを ―
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